モンテディオプレスぷらす「佐藤瑠星選手インタビュー」
【モンテディオ山形】山形の若き壁・佐藤瑠星。ルーキーイヤーの移籍と、ゴールを守る覚悟。
モンテディオ山形の最後方に、190cmの壁がそびえ立つ。今夏、浦和レッズから育成型期限付き移籍で加わったGK佐藤瑠星選手だ。全国高等学校サッカー選手権大会準優勝、筑波大学での大学日本一、そして国内屈指のビッグクラブ・浦和への加入と、順調にサッカーキャリアを歩み続けてきた。その素顔はとても素直で、現状に甘んじることのない探究心に満ちている。「試合に出てこそプロ」。―その信念を胸に、J1クラブを飛び出し山形の地へやってきた若き守護神が語る、ゴールを守る覚悟。(取材日:2026年10月7日、写真は明治安田J2リーグ戦より)

サッカーの原点と、一度きりの「浮気」
Q:まずはサッカーを始めたきっかけから教えてください。
6歳上の兄がサッカーをしていた影響で、自然とボールを蹴り始めました。幼稚園の年中くらいの時期ですね。小学生の頃は、最初はスクールに通って、小学4年生からはクラブチームの「熊本アクアSC」に入りました。当時はフォワードやセンターバック、サイドハーフまで、いろいろなポジションをやっていましたね。とにかくボールを追いかけるのが楽しくて仕方ない、そんな少年でした。
Q:実は、一度サッカーから離れた時期があるとお聞きしましたが。
そうなんです。小学5、6年生の頃、バレーボールにめちゃくちゃハマってしまって。身長も当時から人より高かったですし、友達に誘われたりして「バレーがしたい!」と2カ月くらいサッカーをやめた時期がありました。親譲りの恵まれた体格(父180cm前半、母170cm台)もあって、バレーも楽しかったんですけど、やっぱり自分にはフィールドを走り回る方が合っているなと。結局、またサッカーに戻ってきたんですけど、あのままバレーを続けていたらどうなっていたんでしょうね。

GK転向、そして「高校選手権準優勝」へ
Q:合志中学校の2年生でGKに転向されました。当初は前向きではなかったとか。
中学の顧問の先生に勧められたのがきっかけですが、当時はキーパーに対して「地味」という印象があって、最初は正直「嫌々」でした(笑)。点を入れるのが好きでしたし、フォワードへの未練もありました。でも、やっていくうちに相手のシュートを止める楽しさに目覚めて、気づけば夢中になっていました。シュートを一本止めることが、ゴールを決めるのと同じくらい、あるいはそれ以上にアドレナリンが出ることに気付いたんです。中体連の枠を超えて県選抜に選ばれたのは、自信になりました。
Q:高校は地元の強豪・大津高校に進学。2021年度の全国高等学校サッカー選手権大会準優勝といった実績を残されました。
私立高校から特待生の話もあり、迷ったのですが、やはり最初に行きたいと思った大津高校を選びました。3年間は、自分の基礎を作った重要な時間でした。複数の、素晴らしいキーパーコーチの方々から指導を受けたことで、GKとしての多様な考え方や技術を吸収できました。選手権での準優勝や優秀選手選出、U-18日本代表候補への選出は、自分の中で「プロ」という目標を現実味のあるものに変えてくれました。
筑波大学での「暗黒期」と「自分へのベクトル」
Q:高校卒業後は、大学サッカーを牽引する名門・筑波大学へ。
ずっと高卒プロ入りを目指してきましたが、高校3年時にレノファ山口FCの練習に参加させてもらった際、「何もできないレベル」だと痛感しました。技術もスピード感も、プロの世界は自分の想像の数百倍すごかった。平岡総監督からの勧めもあり、筑波大学で4年間しっかり成長してからプロに行こうと決めました。高校ではサッカーが生活の9割を占めていましたが、学業も成績を落とさないよう頑張ってきたつもりです。
Q:筑波大ではU-19日本代表として国際舞台も経験されています。大学の4年間は順調だったのでしょうか。
代表ではあまり目立った活躍はできませんでした。そして大学2年生の頃に「暗黒期」がありました。1年生の頃からベンチに入れていたのですが、急に調子を落としてしまって。メンバーにすら入れない時期が続きました。
Q:何が原因だったのでしょう。
当時の僕は、ベクトルが完全に「外」に向いていました。「なんで使ってくれないんだ」「あいつがミスしたからだ」と、何でも人のせいにしていたんです。生活面でも、一人暮らしの甘えから遅刻を繰り返したりして…。本当に自立できていませんでした。
Q:そこをどう乗り越えたのですか。
小井土監督や、周りの先輩、同期たちが根気強く向き合ってくれました。何度も話し合う中で「すべては自分に原因がある」と気付き、ベクトルを「自分」に向けられるようになったんです。考え方が変わると生活習慣も変わり、練習の質も向上しました。一度立ち止まって自分を見つめ直したことが、結果的に力になったと思っています。

浦和での「特別指定」を経て、山形での覚悟
Q:特別指定選手を経て2026年に浦和へ入団。そして今夏、山形への期限付き移籍。この決断の裏にはどのような思いがありましたか。
浦和は憧れのビッグクラブであり、メソッドも環境も国内最高峰です。しかし加入して約半年、全く試合に絡むことができず、悔しさとともに「ピッチに立って試合に出てこそプロ」という思いが強くなりました。まだ1年目ですし、浦和に残る選択肢もありましたが、山形がチャンスをくれた時、迷いはありませんでした。山形で圧倒的な結果を残し、浦和が「戻ってきてほしい」と切望するような選手になると心に誓いました。それほどの覚悟を持ってこの地に来ています。今は「浦和に戻るため」ではなく、山形のJ1昇格の力になるためプレーしています。
Q:山形ではリーグ開幕戦からスタメンの座をつかみました。
キャンプの時から試合に出ることをイメージし、常に逆算して準備を積み重ねてきました。J2は想像以上にレベルが高く、一つのミスで流れがガラッと変わる怖さがあります。身体能力だけで守れていた学生時代とは別物です。常に神経を研ぎ澄ませていなければならない緊張感があります。それを味わえるのも、試合に出場できているから。試合でしか得られない成長と課題を見つけることができ、充実しています。
Q:佐藤選手のプレーの中で、「自分のここを見てほしい!」というストロングポイント、逆に今感じている課題はどこにありますか。
体格を生かしたダイナミックなプレーや、最後方から放つ存在感を見てほしいです。特にシュートストップや、鋭い飛び出しには自信を持っていますし、スタジアムで生で観ていただいた時にその迫力を感じてもらえたらうれしいですね。
一方で、課題は「足元の技術」だと思っています。ビルドアップへの参加や、もっと落ち着いてプレーすること。キックの精度もさらに上げていきたいです。現代のキーパーは守るだけでなく、攻撃の起点になることも求められます。そこで自分の色を出して、チームに「プラスワン」の価値をもたらせるようになりたい。そこでもう一つ違いを作ることができれば、さらに上のレベルへ行けると考えています。

佐藤瑠星の「素顔」と山形での自炊生活
Q:山形での生活はいかがですか。
山形はのどかで、自然も豊かですごく住みやすいですね。まだ車を持っていないので、家で過ごす時間も多いです。Netflixで日本のドラマや映画を観たりしてリラックスしています。あまり外食せずご飯は家で食べることが多いですね。
Q:自炊が苦にならないとか。
僕は体重が減りやすいタイプなので、必要な量をしっかり食べたいんです。最近は鍋が多いですね。豚バラの入った辛口の鍋がお気に入りです。野菜もしっかり取れますしね。お米は3合から4合は炊いて、2食分にする感じです。
Q:オフの日は何を?
東京に行って、筑波大の同期や地元の友達と会うこともあります。山形にいる時は、基本的には家で寝るか料理をするか、サッカーのことを考えています。
Q:ルーティンはありますか?
ルーティンはあまり作りたくないですね。それができなかった時に、マイナスを感じてしまうタイプです。あまりストイックに突き詰めるより、「自分のリズムでやりたいようにやる」スタイルが、一番ストレスなくパフォーマンスにつながると感じています。

憧れの存在と、世界への夢
Q:目標にしている選手はいますか。
浦和から世界へ羽ばたいた鈴木彩艶選手、そして浦和の西川周作選手です。特に西川さんはプレースタイルも人格も本当に尊敬しています。常に笑顔で接してくれて、どんな時も礼儀正しい。技術だけでなく、あの人間性こそがビッグクラブのゴールを守り続けられる理由なんだと感じます。僕も、子供たちに夢を与えられるような、そんな存在になりたいです。
Q:将来的な目標を教えてください。
海外へも挑戦したいし、何よりワールドカップに出たいです。今はまだそのレベルにいないかもしれませんが、口に出すことで自分を追い込んでいきたいです。まずは山形で結果を残し、J1昇格に貢献することが、その大きな夢への第一歩だと信じています。

「個人チャント」の衝撃と、ダービーへの誓い
Q:10月3日のアウエー大分戦では、新しい個人チャントが披露されましたね。
本当にびっくりしました! あのタイミングで作っていただけるとは思っていなかったので、最高にうれしかったです。サポーターの皆さんの期待がダイレクトに伝わってきて、これまで以上に「この人たちのために勝たなきゃいけない」という強いモチベーションになりました。
Q:いよいよ明日はベガルタ仙台との「みちのくダービー」です。
僕にとって初めてのダービーです。皆さんがこの一戦にどれだけ懸けているかは、1年目の僕にも伝わります。その熱い思いに応えるには、結果しかありません。J1昇格を目指す上で、絶対に負けられない一戦です。僕が最後方で体を張って、絶対にゴールを守り抜きます。
Q:最後に、県民の皆さんへメッセージをお願いします。
サポーターの皆さんの応援は、僕が戦うための最大の力です。だからこそ、皆さんと一緒に勝利を分かち合いたい。共に戦い、最後は全員で笑いましょう。最高の準備をして、スタジアムで待っています!

【プロフィル】佐藤 瑠星(さとう・りゅうせい)2003年生まれ、熊本県出身。190cm、86kg。合志中から名門・大津高へ進み、21年度全国高校選手権準優勝・優秀選手選出。筑波大ではU-19日本代表として国際大会を経験。23年U-20全日本大学選抜、24年デンソーカップチャレンジ関東A選抜選出など、大学サッカー界を代表する守護神として活躍。大学3年時の天皇杯ではJ1クラブを相手に好セーブを連発しジャイアントキリングの立役者に。4年時は関東大学リーグとインカレの2冠を達成した。浦和レッズの特別指定選手を経て、26年に浦和に加入。今夏、期限付き移籍でモンテディオ山形へ。リーチを生かしたシュートストップと鋭い飛び出しが持ち味の次世代守護神。
〈これまでのプレスインタビュー〉
◎氣田亮真選手(2026.09.25掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/1848)
◎坂本稀吏也選手(2026.05.23掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/1519)
◎岡本一真選手【後編】(2026.05.09掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/1434)
◎岡本一真選手【前編】(2026.05.02掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/1441)
◎寺山翼選手(2026.04.11掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/1338)
◎南秀仁選手(2025.11.28掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/542 )
◎堀金峻明選手(2025.10.18掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/446)
◎横内昭展監督(2025.09.01掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/87)
◎中村亮太郎選手(2025.09.01掲載)(リンク:https://yamagatadoor.com/montedio/196)





